輸血・再生医療部門

患者様へ・再生医療の実例

末梢動脈疾患における再生医療/厚生労働省ヒト幹細胞臨床研究審査承認

末梢動脈疾患とは

主な病気としては閉塞性動脈硬化症とバージャー病の2つがあります。

1. 閉塞性動脈硬化症
足の血管の動脈硬化がすすみ、血管が細くなり、充分な血流が保てなくなる病気です。(図1) 初期にはしびれや冷感程度の症状ですが、進行すると間欠性跛行(ある一定の距離を歩くと必ず足に痛みを感じ、休むと治まる)となり、最後には安静時の痛みや潰瘍が出現し、壊死します。(図2)下肢切断を余儀なくされることもあります。糖尿病・高血圧・高脂血症などの生活習慣病が原因となります。
2. バージャー病
主に膝より下の動脈が細くなり、十分な血流が保てなくなる病気です。閉塞性動脈硬化症と同様に血液の流れが悪くなり、歩行時に足のしびれ、痛みや冷たさを感じ、進行すると安静時の痛みや潰瘍が出現します。更に悪化した場合には下肢切断を必要とします。病気の原因はまだよくわかっていませんが、比較的若い喫煙者に発症する疾患といわれています。
図1、図2

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末梢動脈疾患の治療法と血管再生のしくみ

1. 標準的な治療法

まずは薬物療法や運動療法を行いますが、それでも効果不十分であればカテーテル治療やバイパス手術が行われます。

カテーテル治療は、血管の中に細い管を入れて、動脈が狭くなった部分を風船で拡げ、金属を網の目状にした筒(ステント)を留置します。
バイパス手術は人工血管や表在静脈を用いて、動脈の回り道(バイパス)をつくる手術です。血管がぼろぼろで手術やカテーテル治療ができない場合もあり、やむを得ず下肢切断を要する場合もあります。

そのような重症例に対する新しい治療法として、血管再生療法が期待されています。

2. 骨髄細胞を用いた血管再生療法

外科治療やカテーテル治療が難しい重症な患者さまに対しては、自家骨髄単核細胞移植療法がいくつかの施設で行われています。患者さま自身の骨髄液を採取し、これを血流の悪い足の筋肉内に注射する方法です。患者から全身麻酔で500~1,000ccの骨髄を採取します。

【参考文献】 Tateishi-Yuyama E, Matsubara H, Murohara T, et al. Therapeutic Angiogenesis using Cell Transplantation (TACT) study investigators: therapeutic angiogenesis for patients with limb ischaemia by autologous transplantation of bone-marrow cells: a pilot study and a randomised controlled trial. Lancet 2002; 360: 427-435.

3. 血管再生のしくみ

私たちの病院でも自家骨髄単核細胞移植療法を約40例の患者に行いましたが、中には十分な効果が得られない症例も少なからず存在しました。そこで自家骨髄単核細胞移植療法によって血管再生が起こる仕組みを調べました。
その結果、移植した骨髄単核細胞に含まれている未熟な赤血球(赤芽球)の周囲に血管再生が起こることがわかりました。

下の写真は造血幹細胞から培養によって人工的に作成した未熟赤血球(赤芽球)のかたまり(3コのコロニー)。1つのコロニーは約10万~100万コの赤芽球を含む。赤芽球コロニー(赤)の周りに形成されたネットワーク状の再生血管(緑)

【参考文献】
Ozawa T, Toba K, Kato K, et al. Erythroid cells play essential roles in angiogenesis by bone marrow cell implantation. J Mol Cell Cardiol 2006; 40: 629-638.

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体外増幅自己赤芽球移植療法(EVEETA法)

そこで私たちは、骨髄に含まれている幹細胞から大量の未熟赤血球(赤芽球)を人工的に作成する培養方法を開発しました。動物を使った実験で、この培養赤芽球の移植により強い血管再生が起こり、かつ副作用がないことが確認されました。
そこで、患者さまの骨髄を2週間培養し、得られた大量の赤芽球を血流の悪い足の筋肉内に注射する治療法を開始しました。これを体外増幅自己赤芽球移植療法(EVEETA法)と呼んでいます。
培養する幹細胞を手に入れるため、患者さまから局所麻酔で20~100ccの骨髄を採取します。骨髄単核細胞移植療法に比べ患者さまの負担が少なく、高い治療効果が得られます。

【参考文献】
Oda M, Toba K, Ozawa T, et al. Establishment of culturing system for ex-vivo expansion of angiogenic immature erythroid cells, and its application for treatment of patients with chronic severe lower limb ischemia. J Mol Cell Cardiol 2010; 49: 347-353. Takahashi M. Editorial: “Immature erythroid cells: A new source for therapeutic angiogenesis?” J Mol Cell Cardiol 2010; 49: 341-342.

患者の症状

半年前より左足のしびれと間歇性跛行があり、検査で左下肢の動脈が閉塞していることがわかりました。足先が潰瘍化し、薬剤治療やカテーテル治療で十分な効果を得られず、外科的手術も困難であるといわれたため、私たちの病院へ紹介となりました。

治療方法

局所麻酔下に腰の骨から約80ccの骨髄を採取し、血管再生作用の強い赤芽球を増やすことを目的に約2週間かけて培養を行いました。この細胞を血流の悪い部位へ筋肉内注射しました。

治療効果

2012年までに11例の治療を実地し、良好な結果を得ています。

 

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